ワイン教室では教えてくれないかもしれないこと


最近飲んで面白いと思ったワイン2種。左がオーストラリアのShobbrook Wines、右がカリフォルニアのBroc Cellarsです。とくに意識せずに買ってエチケットがたまたま黒と白で対称的だなと思ったのですが、そこに手書き風のシンプルな表記というところが似ているというのが並べてみるとなかなか面白い、とそのようなことを思ったわけでして。で、そのお味はというと。

・CLAROTT 2014 Shobbrook Wines by Tommy Ruff
南仏っぽい綺麗なローヌみたいな赤。ちょいジャミーさあり、樽は感じない。税込み4,000円ぐらいとそこそこのお値段はしますが、試飲してポテンシャルを感じたので買いました。ビオ系に分類されるみたいなのですがそんなにビオっぽくはなく、あまりオリも感じず。セパージュはメルロとシラーズ。Lucy Margauxと並び称されるらしいのですが、ああいう小さい子供の描いた絵をエチケットにしましたみたいなセンスは好きではないので味以前の問題として飲む気がしないですね。

南オーストラリア、アデレード近郊のBarossa Valleyのワイナリーで、元々ヨーロッパ系の移民の多いエリアということもあってかあまりニューワールドを感じない造り。なおこのエリアはフィロキセラが蔓延したことがないため自根の古木がわりと多く残っているそうです。

・CABERNET FRANC 2012 Broc Cellars
最初開けてすぐは濃いめのブルゴーニュに思えたくらいなめらかな造り。時間が経つとややスパイシーさが出てきてフランっぽさが出てきます。個人的にはブルゴーニュ好きに熱くおすすめしたい。これも4,000円くらいだったかな。本拠はカリフォルニア、Berkeleyの都市型ワイナリーのようですがSanta Barbara、Sonomaに加えオレゴンでもブドウを栽培しているようで品種もわりと色々と作っているようです。今後も期待大。


ちなみに今までビオい系も一通り飲んできたのですが、最近は飲んだ瞬間に馬小屋の香りが口の中いっぱいに広がるタイプのビオワインのいうのがどうにも苦手になってきまして。ビオが悪いとは思いませんが、卵白使って清澄するぐらいのことはしても良いのではないかと思います。濁ってるとか微発泡してるのが自然で良いとはまっったく思いません。というのが私のワインに対する基本スタンスであります。

そのビオの中でもビオディナミ、というかその提唱者たるRudolf Steinerという人はそもそも何者なのか、ということをきちんと理解している人はワイン業界にはほぼ居ないような気がするのでここで簡単に書いておこうかと思うのですが(国内上位の大学の院レベル以上での哲学の経験がないと根本的な部分で理解するのは多分無理です)これはワイン教室では教えられませんわな、そりゃ教える側が普通そんな経験を持っていないんだもの。

シュタイナーという人は100年ほど前にオーストリア・ドイツに生きていた人智学者、教育思想家、芸術家、建築家にしてオカルティストなお方。元々はゲーテ研究者で、その名もゲーテアヌムと呼ばれるシュタイナーが設計した建築が今もスイスのバーゼル近郊に残っております。またその内部空間の色の使い方は明らかにゲーテ晩年の「色彩論」の影響を受けていると思います。

教育に関しても有名な方でして、その大きな特徴としては幼児期に「数字、文字を教えない」ということにあります。これはモンテッソーリも実は共通しているらしいのですが、私は教育学にはあまり明るくないので説明は端折ります。何でしょうね、幼児期は論理的思考よりも抽象的思考を優先すべきということでしょうか。

芸術方面においては笠井叡氏や、かのJoseph Beuysもその思想に影響を受けていたりとかなり広範な影響力を現代まで及ぼしています。で、肝心の農業に関しては天体の運行に従って栽培をするとかこういうの
を畑に撒いたりするわけですが。

なんでこんなオカルトがブルゴーニュを中心としてこれだけ流行るのか、というのは私には正直謎です。ルロワとかルフレーヴが信望していてあれだけ美味いというのも原因とは思いますが、ボルドーだと実践しているのは一部だけですしね。農業というのはオカルトが入り込みやすいというのはわかるんですが(祖父母は農家でしたし、その家に神棚はありましたし別にそういうのを拝むことを否定するわけではありません)Frederic Cossardなどに至ってはホメオパシーまで言い出すに至り頭が痛くなります。正直Chassorneyを旨いと思ったことは一度としてありません。

そもそもビオいのって究極的には正しくないと思うんですよ。SO2無添加のワインはSO2を入れていないワインよりも温度管理に関しては厳しくしなければならないわけで、原発や石油を使って発電した電気を大量に消費しなければ保管できない「ナチュラルワイン」って、それは少々味が良かろうが何だろうが非常に矛盾した存在だと思います。またそれらのワインを常温で保管するに至ってはもはや愚の極みです。もうね、ビオいのなら何でも美味しい、体に良いとかいうのはそれ商業主義に毒されすぎですから。騙されないでください。

なおオカルト云々についてはIsaac Newtonは実はオカルト研究に精を出していたとかいうことやイスラムの占星術が数学の発展に多大な影響を及ぼしたといったことも知っておりますし、ネオプラトニズムや中世キリスト教哲学に関しての文献もそれなりに読んでいるということはお断りしておきます。

要するにワインは美味ければ良い、不味ければビオだろうが何だろうが駄目、それで良いのだと思います。

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