Reach Out, I'm Right Here
今現在ヒカリエの8/ ART GALLERYでも展示されている、Ryan McGinleyの作品。音楽が小さくしか掛かっていなかったので、Francesco Tristanoの「idiosynkrasia」をiPodで聞きつつ眺めていたら、かなりのシンクロ感があって素晴らしかったので書いておくことにします。#5 Fragrance De Fragaあたりが実にいい。
ライアン自身は相当なロック好きのようで（Morrisseyのファンらしい）、ヒカリエと同時に作品展が開催されている清澄にある小山登美夫ギャラリーの方で行われたオープニングレセプションでは、彼は入ってくるなり
これを置き、フロアにはdiptyqueの苔の香りとともに（キャンドルの方はギャラリーに元からあった）流れるロック・ミュージック。しゃれおつですな。この辺の感覚がいかにもアメリカ人。彼の写真を私が最初に意識したのは、今は無きEsquire日本版の2005年2月号の表紙。それが今や、世界で最も旬なフォトグラファーと言ってしまっていいでしょう、しかもこのまま行けばTillmans以降の最重要人物として歴史に名を残すことがほぼ確定的。経歴は検索を掛ければすぐに出てくるので書きませんけれど、超イケメンだわ、背高いわ（たぶん190cmくらい）、Parsons出とるわ、ご覧の通りのとんでもない写真のセンスを持っとるわで、なんかもう腹立たしいぐらいにいろいろ揃ってらっしゃいます。
彼の写真というと裸体が何かと意識されがちですが、個人的には最も特徴的なのは圧倒的な「色」。色に支配された写真。それもニュー・カラーのそれとは違うし、蜷川実花的なある種の毒々しさを持った色とも違う。何か新しい感じがする、やや不思議な色の感覚。
あと意外と、人を遠方から撮った表現を好むんですよね。
↑これとかまさにそうなんですが、本当に彼がケタ外れの才能を持っているということがよくわかる動画。普通この曲調でこういう動画は撮らないし、撮れない。街中で少女？ がスキップをしているというだけなんですが、カットの一つ一つがものすごく良く出来ていて驚きでした。間違いなく近年のベストMV。そのうち映画とか撮り始めるかもしれないな。（なんか実際に撮る予定らしい？）
これも7Dで撮っているんですかね。雑誌のインタビューを見る限り基本的に動画は7D、写真は5Dで撮っているらしいのだけれど、これで機材で言い訳ができなくなってしまいました。7Dや5Dであれだけのものを作られてしまっては。彼の作品ってわりと大きくて今回の展示も横2メートルぐらいのとか普通にあったんですが、よく見るとちょっと荒いかなあというぐらいでまあ普通に見る分には気にならないレベル。それどころかフィルムに似た質感にするために粒子をデジタル処理で少し足してある、というインタビュー記事を読んで思わず吹きました。まあレンズは相当にいいのを使っていると思われますが。
最新作のAnimalsとGregory Colbertの作品を見比べてみるのも面白いかも。動物をカラーペーパーの前で撮るっていうのは確かに無かった発想。Gregory Colbertもあれはあれで好きですけどね。同じ人と動物を撮ってもこうまで違うもんかと。
ちなみに、蛇足ですけど冒頭で書いたFrancesco Tristanoの「idiosynkrasia」（語源はギリシア語で ἰδιοσυγκρασία）というタイトルは、「自分への正しいやり方」という意味だとトリスターノ自身は言っておりますが、実はこのタイトルと同一の語はかの「啓蒙の弁証法」でも使われておりまして、そこで使われている用法は彼自身の説明とは大きく異なります。知ってて付けたのならかなりの曲者だな、彼は。見た目なんとなく少年っぽく、才能に溢れて頭良さそうな辺りに彼とライアンはやや被るところがあります。何かちょっと曲者っぽいところも。所謂enfant terribleな感じというか。
Reach Out, I'm Right Hereは「手を伸ばして、僕はここにいるよ」って感じかな。これは特に含みはないと思うけど。レセプションには国内のかなり有名なフォトグラファーもちらほらいましたけど、名前を出すのは止めておくことにします。
ライアン・マッギンレー 展 Reach Out, I’m Right Here 2012
Ryan McGinley
Gregory Colbert
Wolfgang Tillmans
Francesco Tristano
Diptyque Paris
Jambox
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