Dedicated to Saul Leiter


いやあパツキンていいよね、という記事ではないのですが。画像はアメリカに行ったときに撮ったアメリカ人の若い女の子の後ろ髪です。まあ決して嫌いではありません。むしろ好きです。帰国してから一度お蔵にしていたのですが、
http://flopetersgallery.com/artists/saul-leiter
先日この画像を見て気が変わりまして。コレはSaul Leiterという2013年に89歳で亡くなったアメリカ人の写真家の作品ですが、感覚がまんま同じで驚きました。なんか10年くらい前に当時住んでいた西葛西の河川敷で撮った写真がAlbert Renger-Patzschの撮ったこの写真
http://cs.nga.gov.au/Detail-LRG.cfm?IRN=90474
と構図がまったく同じだったということもありますし、無意識的に過去のスッゴイ写真家の撮った写真と、自分の撮った写真の構図や質感が非常に似ているということがわりとよくあるというのはセンスがあるとも言えるけれどもちょっと注意すべきであるとも言えるし、それは良いことでもあり悪いことでもあると言えるのかもしれないね。

さてそのSaul Leiterという人の代表作はEarly Colorと申しまして、かのSTEIDL社から出版されております。その名の通り70年代前後にニュー・カラーだとかが出てきてカラー写真がきちんとアートとして認められるようになる時代にかなり先んじてカラーで作品を撮っていたという人物。とはいえMoMAの写真部門のディレクターであったEdward Steichen様もその才能を見抜いていたらしいので、まあちゃんと見る人は見ていたわけですね。イタリアにもLuigi Ghirriという同じくカラーのアート写真の先駆者と言われている人がおりますが、「何故彼らは白黒しかアート写真として認められなかった時代にカラーであることに拘泥したのか」ということに対する回答は、昨年出たギッリの「写真講義」の翻訳を読めば明らかになります。

http://www.msz.co.jp/topics/07836/
Saul Leiterは元々画家になりたかった。ギッリの写真講義は、写真の歴史を語るのにまずイメージの歴史を語ることから始めます。そこには絵画があり、「如何にしてイメージを解釈するか」という話が続く。これは実際に読んでいただいた方が早いと思いますが、西洋絵画の多くはカラーで描かれてきたわけで、彼らの感覚の上では写真は絵画の延長線上にあるのだから、別にカラーを選ぶのは自然なことと言えます。その両者に分断はない。

私の撮る写真も非常に絵画っぽい、と言われたりあまり日本人っぽくない、と言われることが多いのですが最近になって悟りました。私も完全に絵画の延長線上で写真を撮っているということを。まあ、あのBecherの給水塔の写真の根っこにもGiorgio Morandiの絵画があることを思えば、海外の写真家の根底にも多くの場合絵画の影響は確実にあるとは言えますね。あらゆる西洋文学はギリシア神話から逃れることはできない、またキリスト教から逃れることはできないと思っていますが、それはおそらく写真においても同様で連綿と続く膨大な西洋絵画の方法論から完全に逃れることはできないのではないでしょうか。

近年流行りの作り込んだ系の写真の流れもそろそろ終わるかな、というかなんかもうああいうのもう疲れた、みたいに思うこの頃でございますが、かといってなあ。今さらスナップに革新がある?  スナップでもdiCorcia的な感じなら面白い? 写真がそれを写真にすることで、そうではないものに見えるという現象学的な問いを突き付けるだけのものであろうとするならば、そんなものはつまらないと私は迷うことなく切って捨てます。とはいえわりとよくある、画面の中にちょっとおかしなところがあるというところを撮るタイプの写真というのは、いわばいくらでも撮れてしまうし結局大抵は大した写真にはならない。あるいはゴドーを待つかの如く何も起こらないことに新しいことを見出すべき? とか2年くらい堂々巡りで悩んでおりましたが、当面のところもう開き直ってストレートかつ捻じくれた絵画的な切り取り方で行こうと思います。しかしそうすると最終的に行き着くのはBressonなんだよなあ‥ 実に無難でありきたり過ぎる結論ですみませんな。

映画『写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと』
http://saulleiter-movie.com

Albert Renger-Patzsch
https://priskapasquer.com/albert-renger-patzsch/?v=24d22e03afb2

Early Color
https://steidl.de/Books/Early-Color-2936435359.html

Edward Steichen
http://www.smithsonianmag.com/arts-culture/edward-steichen-in-vogue-125189608/

Luigi Ghirri
http://www.mackbooks.co.uk/books/44-kodachrome.html

写真講義
http://www.msz.co.jp/book/detail/07836.html

Becher
http://www.guggenheim.org/new-york/collections/collection-online/artwork/500

Giorgio Morandi
http://www.artyfactory.com/art_appreciation/still_life/giorgio_morandi.htm

Philip-Lorca diCorcia
http://www.moma.org/collection/artists/7027

Henri Cartier-Bresson
http://www.magnumphotos.com/C.aspx?VP3=CMS3&VF=MAGO31_10_VForm&ERID=24KL53ZMYN

コメント

このブログの人気の投稿

Thomas Demandに会ったりする

Mnemosyne-Atlas

Colombia 2011 COE Buenavista